数学ガールを読んだ

とても気持ち良くて、でも哀しい本。

ネタバレ警告:以下の文章には作品の内容について触れている箇所があります。まだ該当作品をご覧になっていないかたはご注意ください。

数学書であり青春小説でもある本書。まずは数学書(西の丘)から評価。

(´・ω・`)のワルツ

数学部分はとてもリアルで本気。理系出身(非数学科)な自分でも追いかけるのが精いっぱい。というか一部追いつけてないのが正直なところ。まぁこれは僕の能力の低さに起因することではあるけれど、こんなに数学を忘れていたかと思うと(´・ω・`)ショボーンとなる。

それでも、作中に出てくる数式が丁寧に展開されるし、前半で出てきた内容が後半で思わぬ形で表れてきて視界がクリアになって突然理解が進むときもある。

こんなとき数学はミステリを読んでいるような気分になる。数学者という名探偵が残された手がかりを集め、本質を見抜き、そして思考をジャンプさせて思いもよらない真実を導き出してストンと落ちるカタルシス。これは気持ちいいよ。

imaginary girl

次は東の森。青春小説部分に目を向ければ本書の重要な要素であるミルカさんとテトラちゃんに行き当たる。

自分の話すことを手放しで「凄い凄い」と持てはやしてくれる。自分の駄目な部分を無条件に許してくれる。自分が好きなものを好きでいてくれて、さらに自分にも好意がある。ミルカさんとテトラちゃんは理系男子が想像する理想的な女性像の投影にしか思えない。

ミルカさんやテトラちゃんのような少女は現実に存在しない。彼女たちが描くグラフはまるで、実数解を持たない関数のように現実との交点を持たない「虚」な、しかしとても美しい曲線。

だからこそ、現実との交点を持たざるを得ない僕たちは彼女たちの姿を追いかけてしまう。自分の描くグラフだけは彼女たちのグラフとの交点があると信じて。

もし僕が「僕」のように数学の才能があったならきっと数学にハマっていたに違いない。数学の美しさを求めるという言い訳で、現実の理不尽さから逃げるように。

親から強制されて式変形しているわけじゃない

P.94

「僕」が式変形をするのは好きだからだけではない。きっと「親から強制されていないから」だ。現実を押し付ける親に対するささやかな反抗。

虚数単位以外に、どんなアイがあるの?

P.43

現実の世界には「愛」もあれば「I」もある。でも逃避を続ける「僕」の世界にはきっと「哀」しか無い。本書の最後で「僕」は数学の教師になっている。ミルカさんともテトラちゃんとも「僕」は友達のままだ。これが「僕」の望んだ世界ならそれはとても哀しい。パラメータを1つ変えるだけで「僕」という無限級数は発散もすれば収束もするのだから、このエピローグは「と置いた場合」の世界であってほしい。

ほんと、このままだと数学ガールのラストは「病院のベッドの上で目を覚ます「僕」。その姿を見て驚き喜ぶ老いた両親。これまでの物語は交通事故で意識不明となっていた「僕」の見ていた夢だった。そのことを知った「僕」は退院後すぐに世を儚んで死を選ぶ。」みたいなどこかで聞いたような鬱エンドになりそうで心配。

どうでもいい感想とか

  • テトラちゃんは「僕」と一緒に歩きたいから「数学」が好き。ミルカさんは「数学」を一緒に歩けるから「僕」が好き。
    「僕」よ。選ぶならテトラちゃんを選べ。ミルカさんは地雷だ。
  • ぶっちゃけ「僕」が羨ましい。リア充爆発しろ!
  • フィボナッチ数列の母関数F(x)の展開中に等比級数の公式1+x+x^2+x^3+...=1/1-xをつかって1/1-rxを展開してるけど、|x|<1という条件はどうなるの?母関数で重要なのは係数だから気にしなくていいの?そういや別のところで形式的な変数xって書いてたなぁ?勝手においていいのかな?
  • 背理法好きだったよ。苦手な人多かったのか。。。証明問題全般が好きだったな。
  • 作中でミルカさんとエイエイが弾く無限上昇するピアノは「シェパードトーン」。子供の頃科学館で聞いて不思議だったな。
  • 声に出して読みたい日本語ではなく手を動かして読みたいラブコメ
  • 数学に興味を持ってもらうために数学好きじゃない人に薦めるのは危険。
  • 上記が目的なら数学者をクローズアップした物語の方が良い気がするな。ガロアとか夭折してるしキャッチーだよね。
  • 次は「秘密ノート」読みます